2025年度FNCA放射線治療プロジェクトワークショップ 議事録
2025年10月13日〜16日
セメイ、カザフスタン
(1) 第25回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーター会合の合意に従って、2025年度FNCA放射線治療ワークショップが2025年10月13日〜16日にカザフスタンのセメイにおいて開催された。本ワークショップは、カザフスタン国立原子力センター(NNC)、カザフスタンアバイ州保健局核医学・腫瘍センター、及び日本の文部科学省(MEXT)により共催されたものである。FNCA参加国である12ヵ国、すなわちバングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、シンガポール、タイ及びベトナムの代表が本ワークショップに参加した。
開会式
(2) カザフスタン国立原子力センターの副所長である Sergey Berezin氏が開会セッションの進行役を務めた。
アバイ州保健局の戦略的開発及び組織的・経済的問題担当副局長であるZhasulan Sabitov氏が歓迎の挨拶を行った。
アバイ州保健局核医学・腫瘍センターの所長であるSayat Tanatarov氏が参加者に対し歓迎の挨拶を行った。
カザフスタン国立がんセンターの腫瘍学チーフコンサルタントであるTasbolat Adylkhanov氏が歓迎の挨拶を行った。
FNCAの日本コーディネーターである玉田正男氏が開会の挨拶を行った。
文部科学省(MEXT)の中嶋翔梧氏が開会の挨拶を行った。
放射線治療プロジェクトのプロジェクトリーダーである加藤眞吾氏が挨拶を行った。
(3) カザフスタン、セメイの核医学・腫瘍センターの放射線腫瘍学部長であるNurgul Zhumakanova氏が、「カザフスタンにおける放射線治療の進歩:現状と将来の展望」という特別講演を行った。
(4) カザフ腫瘍学および放射線学研究所の放射線腫瘍医であるMiras Zekebayev氏が「カザフ腫瘍学放射線学研究所における放射線治療能力」という特別講演を行った。
(5) 続いて個々の参加者が紹介された。
(6) アジェンダが採択され、議長と書記が選出された。
(7) シンガポール国立がんセンターの放射線治療部門長兼シニアコンサルタントであるMichael Wang氏が「シンガポールにおける放射線治療」という講演を行った。
セッション1:局所進行子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)の前向き観察研究(CERVIX-V)
(8) 順天堂大学医学部放射線医学教室・放射線治療学講座の先任准教授である小此木範之氏が CERVIX-Vのプロトコールと臨床転帰について説明した。
目標患者登録数は100名である。2017年から2023年10月までの間に108名の患者がCERVIX-Vに登録された。このうち99名が適格であった。FNCA参加国からの患者登録数は、バングラデシュ2名、中国16名、インドネシア9名、日本13名、カザフスタン8名、韓国0名、モンゴル4名、マレーシアは11名、フィリピン8名、タイ32名、ベトナム5名である。
CERVIX-Vの予備解析として、追跡期間中央値44.3か月となる患者99名についての解析が行われた。すべての患者が3D-IGBTの治療を受けた。うち34名では組織内照射を併用したハイブリッド治療が行われた。基準線量との比較では、90%の患者がすべての項目で線量制約を満たした。
毒性に関しては、グレード3の急性期血液毒性が27名(27%)の患者に、グレード3の急性期非血液毒性が3名(3%)の患者に認められた。グレード4又は重度の急性期毒性は見られなかった。グレード3以上の治療関係の晩期毒性が生じた患者はいなかった。
観察期間中央値44.3か月での2年局所制御(LC)率、無増悪生存(PFS)率、全生存(OS)率は、それぞれ92.5%、77.4%、90.6%であった。最終観察日までに11名で局所再発が生じた。
FNCAのCERVIX-Vはこれまでのところ腫瘍学的転帰は優良で、毒性は許容範囲である。FNCA協力施設における子宮頸がんに対する3D-IGBTの有用性が実証されている。
(9) 続いてCERVIX-Vに関する公開討論が行われた。
- 群馬大学大学院医学系研究科腫瘍放射線学の教授である大野達也氏より、治療期間が長くなった理由が問われた。主な理由は機械の故障によるものであった。
- 治療転帰を最適にするために全治療期間を56日以下にすることの重要性についての討論が行われた。病期がIIBとIIIBの患者について別個の解析を行うことも提案された。
- 小此木範之氏が論文を作成し、近く学術誌に掲載する。
セッション2:乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験(術後放射線療法(PMRT)及び全乳房照射(WBI)/BREAST-I)
(10) 河北総合病院放射線腫瘍科部長である唐澤久美子氏と東京女子医科大学医学部助教である河野佐和氏がWBI/BREAST-Iの要約と晩期有害事象について説明した。要約は以下のとおりである。
2013年2月から2018年10月までの間に227名の患者が登録された。各国の患者登録数は、バングラデシュ31名、中国6名、インドネシア16名、日本134名、カザフスタン14名、韓国9名、マレーシア0名、モンゴル3名、フィリピン0名、タイ14名、ベトナム0名であった。すべての患者(治療部位228乳房)がプロトコールの治療を完了し、解析の対象となった。晩期有害事象は、皮膚のグレード1が21%、グレード2が1%、皮下組織のグレード1が10%、乳房のグレード1が9%、肺のグレード1が2%の患者に発生していた。追跡期間が3年以上の患者での整容性は、優が148名、良が74名、可が3名、不良が3名であった。
(11) 次に唐澤氏と河野氏がPMRT/BREAST-1の要約と晩期有害事象について発表した。要約は以下のとおりである。
2013年2月から2019年10月までの間に222名の患者が登録された。各国の患者登録数は、バングラデシュ84名、中国13名、インドネシア0名、日本15名、カザフスタン20名、韓国0名、マレーシア0名、モンゴル26名、フィリピン18名、タイ0名、ベトナム46名であった。追跡期間は1〜139ヵ月で、中央値は80か月である。晩期有害事象は、皮膚のグレード1が42%、グレード2が1%、皮下組織のグレード1が16%、グレード2が2%、乳房のグレード1が5%、肺のグレード1が6%、心臓のグレード1が2%の患者に発生していた。局所領域再発が7件、遠隔転移が39件、乳がん死が29件、他病死が10件生じていた。5年の局所領域制御率、無増悪生存率、全生存率はそれぞれ97%、84.6%、90.5%であった。患側上肢の浮腫についての測定及び評価が可能であった患者は93名(41.9%)で、両側上肢周で2cm以上の差、あるいは軽度の浮腫の自覚症状があった者はそのうちの89.2%であった。
続いてBREAST-Iの臨床データに関する公開討論が行われた。
セッション3:非小細胞肺がんからの多発性脳転移に対する全脳放射線治療(BRAIN-I)
(12) マヒドン大学医学部シリラー病院放射線科放射線腫瘍学分野の准教授であるKullathorn Thephamongkhol氏が、BRAIN-I(非小細胞肺がんにおける緩和的全脳照射による延命効果:予測モデルの外的検証とモデル更新)のプロトコールを発表した。
(13) Kullathorn Thephamongkhol氏は、背景と方法論、データの送付と点検の方法、症例報告書を使用する理由と研究ハイライトを紹介し、行動を喚起した。その予後予測多変量モデリング研究の研究デザイン及び概略的計画も提示された。
(14) 目標患者登録数は800名である。2025年10月13日までに847名の患者がBRAIN-Iに登録された。うち506名が解析可能であった。参加国からの登録者数は、バングラデシュ4名、中国50名、インドネシア1名、モンゴル3名、マレーシア15名、日本12名、フィリピン22名、タイ676名である。341名は欠測データがあるため審査中であった。
(15) Kullathorn Thephamongkhol氏はその研究のための行動計画案を発表した。新規患者登録目標を100〜150名として、欠測データの再検討、新規患者の登録、及びデータの更新を含むデータリカバリーが2026年1月まで続けられる予定である。患者登録の最終期日は2026年1月31日とする。最終データセットを作成するための計画的品質点検や論理エラーの修正を含むデータクリーニングは、2026年2月〜3月に行われる。データ解析は2026年4月〜5月に行われる
(16) 続いてBRAIN-Iの臨床データに関する公開討論が行われた。
- バングラデシュ国立耳鼻咽喉科学研究所放射線腫瘍学科の准教授であるUddin Kamal氏が、ECOGパフォーマンスステータスを決定する時期について説明した。我々が全脳放射線治療の実施を決定する時期となるとの回答があった。
セッション4:新規臨床試験
(17) 局所進行子宮頸がんに対して全骨盤の強度変調放射線治療(IMRT)と3D-IGBTを用いる同時併用化学療法についての新規臨床試験(CERVIX-VI)が大野達也氏より提案された。この臨床試験のコンセプトと詳細なプロトコールが、事前に配布されたアンケートに基づき審査され、確認された。このプロトコールは、FNCAの活動の一環としてFNCAのメンバーによって正式に承認された。医学物理士チームがQA/QC項目をさらに詳しく審査することも提案された。必要な改訂の後に、最終決定されたプロトコールがFNCAのすべてのメンバーとの間で共有される。
(18) 唐澤久美子氏が、乳がんに対する術後超寡分割放射線治療についてのアンケート調査の結果の概要を発表した。発表には、施設と関心に関する包括的概要、適格性基準、施設情報、放射線治療方法、及び一般的コメントなどが含まれていた。すべての参加者が、提案されたプロトコールに関する見解を共有し、それぞれの国における本研究への参加の実現可能性と意志を示した。また、現在の実施方法の国ごとのばらつきがあることを認識し、標準化の必要性を認識した。ブースト照射線量の決定に関連する放射線治療の詳細、同時ブースト法(SIB)の適用可能性、及びQA/QC手順などの放射線治療の評価についての討論が行われた。参加国間で照射技術を統合し、合意できるプロトコールを確立することを目的とした2回目のアンケート調査が提案された。将来、参加国でプロトコールが実行可能であるか評価するため、ダミーランを実施する可能性が提起された。2回目のアンケート式調査票の作成は唐澤久美子氏が行うこととなった。
セッション5:その他の臨床試験
(19) マヒドン大学医学部シリラー病院の講師であるWajana Thaweerat氏が、局所進行直腸がんに対するtotal neoadjuvant therapy(TNT)についてのアンケート式調査の結果を発表した。続いて公開討論が行われ、すべてのメンバーが後ろ向き試験を進めることに同意した。同試験のプロトコールはWajana Thaweerat氏が作成し、次回会合で発表する。
セッション6:子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)についてのハンズオントレーニング
(20) アバイ州保健局核医学・腫瘍センターにおいて子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)についてのハンズオントレーニングが実施された。
Tasbolat Adylkhanov氏が開会の挨拶を行い、続いて加藤眞吾氏がアジェンダを確認した。3D-IGBTに関する講義が、大野達也氏、小此木範之氏、及び量子科学技術研究開発機構QST病院の副病院長である若月優氏によって行われた。1件の実際の症例を用いたハンズオントレーニングが実施された。内容は輪郭設定セッション及び計画立案セッションなど。監督は小此木範之氏、マヒドン大学医学部シリラー病院の主任医学物理士で助教であるPitchayut Nakkrasae氏、並びに日本及びタイのその他の講師が行った。
セッション7:オープンレクチャー
(21) アバイ州保健局核医学・腫瘍センターにおいてオープンレクチャーが開催された。
(22) Tasbolat Adylkhanov氏とNurgul Zhumakanova氏がセッションの進行役を務めた。
(23) 玉田正男氏が、「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の概要と進捗 - 原子力の平和利用の分野における近隣アジア諸国との協力」というプレゼンテーションを行った。
(24) Tasbolat Adylkhanov氏が、「カザフスタンにおけるがん治療の現状と成果」という講演を行った。
(25) 加藤眞吾氏が、「局所進行子宮頸がん治療の最新動向」という講演を行った。
(26) Pitchayut Nakkrasae氏が、「婦人科がんの小線源治療における物理的側面と留意点」という講演を行った。
(27) 唐澤久美子氏が、「乳がん放射線治療の最近の傾向と進歩」という講演を行った。
(28) 韓国原子力医学院(KIRAMS)放射線腫瘍学科長である Wonil Jang氏が、「肝細胞がんに対する定位放射線治療(SBRT):適応、テクニック、転帰」という講演を行った。
(29) 量子科学技術研究開発機構QST病院治療診断部頭頚部胸部腫瘍課の医長である牧島弘和氏が、「粒子線治療」という講演を行った。
(30) 唐澤久美子氏が閉会の辞を述べてオープンレクチャーを締めくくった。
セクション8:アバイ州保健局核医学・腫瘍センターへのテクニカルビジット
(31) アバイ州保健局核医学・腫瘍センターにおいてテクニカルビジットが開催された。
セッション9:3D-IGBTのための品質保証/品質管理(QA/QC)
(32) 量子科学技術研究開発機構QST病院医療技術部放射線品質管理室の室長である水野秀之氏と、同QST病院医療技術部放射線品質管理室の研究員である中路拓氏が、カザフスタン、セメイの核医学・腫瘍センターにおいて実施された3D-IGBTにおける線量のQA/QC調査の暫定報告を行った。End to Endテスト、アプリケータ・オフセット値、及び線源強度についての監査結果が許容範囲内であることが示された。
しかし品質保証に関する複数の懸念事項が指摘され、同センターの医学物理士たちは直ちに勧告に応じた対策に着手した。
セッション10:今後の計画
(33) 加藤眞吾氏が今後の計画と次に取り組む活動について説明した。
- 次回ワークショップは韓国で開催される予定であり、暫定的な日程は2026年11月2日〜5日である。今後2年のうちにベトナム又はシンガポールで将来のワークショップを開催することが提案された。
- 臨床試験
- Cervix-V:第1回報告書。追跡調査を継続し、長期転帰(5年転帰)を評価する。学術誌で発表するために、小此木氏を第一著者とした報告書を提出する。
- Breast-I:10年転帰を評価するために追跡調査を継続する。
- Bone-I:医療実態の調査(3年ごと)。次回の調査票は2026年春に配布される。
- Brain-I:2026年1月31日までに、欠測データを修正し、新たな患者を追加する(タイは除く)。最終転帰について評価し、学術誌で発表するためにKullathorn Thephamongkhol氏を第一著者とした報告書を提出する
- Cervix-VI:プロトコールを最終決定し、参加国に配布する。IRBの承認を求め、それを受けて来年に患者登録を開始する。
- Breast-II:議論を継続し、来年に治療法に関する第2回アンケートを作成する。
- Rectum-I:短期/長期放射線治療を伴うTNTについての後ろ向き研究。次回ワークショップでプロトコールを発表、最終決定する。
- 3D-IGBTのQA/QC
- 3D-IGBTのオンサイト線量調査(対象国:まだ検討中)
- その他の活動
- コラボレーションIAEA RCA/RAS 6098を継続し、TecDoc「アジア諸国における緩和的放射線治療の賢明な選択」について評価する。
セッション11:ワークショップ議事録のドラフト作成
(34) ワークショップ参加者がワークショップの討論を振り返った。
議事録のドラフトが書記より提出され、議論が行われ、修正が加えられた。議事録のドラフトはワークショップ終了後に回覧され、最終決定される。
(35) 加藤眞吾氏が閉会の挨拶を行い、参加者全員に対して謝意を述べた。
セッション12:セミパラチンスク核実験場とNNCの放射線安全・環境研究所へのテクニカルビジット
(36) セミパラチンスク核実験場及びカザフスタン国立原子力センター(NNC)の放射線安全・環境研究所においてテクニカルビジットが開催された。
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