FNCA2008放射線安全・廃棄物管理(RS&RWM)ワークショップ
概要
11月3−7日、オーストラリア・シドニー
2008年度のFNCA放射線安全・廃棄物管理ワークショップは、平成20年11月3日から7日までの5日間、メンバー国13名の専門家が参加し、オーストラリアのシドニーにおいて文部科学省と地元主催組織としてのオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)との共催で開催されました。

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左から4番目:小佐古 敏荘氏(日本プロジェクトリーダー)
右から4番目:ロン・キャメロン氏(豪コーディネーター)
右から3番目:ルビ・ディミトロフスキ氏(豪プロジェクトリーダー) |
1)ワークショップの概要
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Ron Cameron氏(ANSTO)
オーストラリア コーディネーター |
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小佐古氏(東大)
日本プロジェクトリーダー |
本プロジェクトは、FNCA参加国間において放射線安全および放射性廃棄物管理に関する情報や経験により得られた知見を交換し共有することにより、アジア地域における放射性安全や放射性廃棄物管理の安全性の向上に資することを目的としたプロジェクトです。平成7年(1995年)から実施してきた放射性廃棄物管理プロジェクトを改組して、新たに平成20年(2008年)に開始しました。プロジェクト活動の中心は、年1回各国持ち回りで開催するワークショップで、各国のプロジェクトリーダーあるいはワークショップにおける討議テーマに即した専門家を招聘して開催します。
今回は、プロジェクトのテーマを放射性廃棄物管理から放射線安全・廃棄物管理とあらためて最初のワークショップでした。FNCA参加8か国、すなわちオーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、タイおよびベトナムから放射線安全あるいは放射性廃棄物管理に関連する政策決定、規制、操業および研究開発等に携わる代表者13名が参加し、カントリーレポートの発表、特定のテーマを設定したサブミーティングおよび円卓討議が行われ、さらにANSTOの施設へのテクニカルビジットも実施されました。
2)開催概要
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期日: |
平成20年11月3日(月)〜7日(金) |
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場所: |
オーストラリア シドニー |
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主催: |
文部科学省、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO) |
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参加者: |
オーストラリア2名、バングラデシュ1名、中国1名、インドネシア1名、日本4名、マレーシア1名、タイ2名、ベトナム1名、合計13名(添付資料参照) |
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日程: |
添付資料参照 |
ワークショップの1日目は、セッション1として、FNCA各国から放射線安全と放射性廃棄物管理の現状と進捗状況についてのカントリーレポートが発表され、その後、FNCA参加国のさらなる理解促進のためにオーストラリアと日本が材料を提供し、ポスターセッションが行われました。
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セッション1の様子
小佐古氏による説明 |
ポスターセッションの様子
近江氏(原電) |
放射線安全の基本について小佐古氏が概説し、次いでセッション2として参加各国からカントリーレポートが発表されました。 |
日本の原子力発電所における放射線防護の実例の紹介 |
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ポスターセッションの様子
服部氏(電中研) |
ポスターセッションの様子
Dancan氏(ANSTO) |
放射線の測定と測定器の実際についておよび2010年に日本での開催が予定されているAOCRP3の予定等が紹介されました。 |
ANSTOにおける放射性廃棄物や身元不明線源等のリスクとセキュリティの観点からの取り扱いの実例およびOPAL研究炉の試運転の状況等が紹介されました。 |
2日目には、セッション3としてカントリーレポートからの特別トピックス(放射線防護と放射性廃棄物管理)、およびセッション4テーマ1として「放射性廃棄物施設のサイティング」について、テーマ2として「参加国における安全に関する諸問題」が発表され議論が行われました。
セッション3では、すべての出席国から発表がされました。オーストラリアからはANSTOにおける除染の実例、バングラデシュからは廃棄物処理と貯蔵のための集中貯蔵施設の設置について、中国からは放射線作業従事者のモニタリング結果等、インドネシアからは線量拘束値と排出限度について、日本からは原子力発電所における個人線量計について、マレーシアからは放射線作業従事者の線量分布、タイからは放射線測定の状況、ベトナムからは緊急時レビューの対応についてそれぞれ紹介されました。セッション4のテーマ1では、オーストラリアから北部準州(Northern Territory)に設置されることになった放射性廃棄物貯蔵サイトについて、バングラデシュから放射性廃棄物貯蔵施設の操業前の安全性に関する紹介があり、テーマ2では、タイからコバルト60線源による深刻な事故の紹介があり、日本からALARAの概念とその一般公衆への適用に焦点をあてた解説が行われました。
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Udorn氏(TINT)とDancan氏(ANSTO) |
Syahrir氏(BATAN)と
L. Dimitrovski氏(ANSTO) |
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M. Islam氏(BAEC)と
K. Fernando氏(ANSTO) |
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3日目は、ANSTOの施設へのテクニカルビジットが行われました。閉鎖とデコミッショニングが行われているMOATAおよびHIFAR炉の見学と放射性廃棄物管理の原則に関するレビューを行い、低レベル放射性廃棄物の中間貯蔵を見学してその安全性を議論し、また高い放射線場での作業を行うホットセルの利用状況について確認しました。また、新型のOPAL炉等を訪問し、さらにANSTOの放射性廃棄物のクリアランスシステム、放射性廃棄物貯蔵の作業の状況について見学しました。
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低レベル放射性廃棄物ドラム缶 |
ドラム缶の貯蔵の様子 |
4段積みになっている。既存の建屋は、ほぼ満杯であるため、新たな建屋の建設を検討中である。 |
4段積みになっている。既存の建屋は、ほぼ満杯であるため、新たな建屋の建設を検討中である。 |
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HIFAR 炉の上部 |
HIFAR 使用済み燃料のための移動装置 |
HIFAR炉には280gのウランを含む25の燃料要素が挿入されるようになっている。 |
HIFAR炉では、上記の形状の特別仕様の移動装置を用いて、4週間ごとに、3あるいは4の燃料要素が炉から取り出され、隣接する貯蔵プールに収納された。 |
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ARPANSAの規制に関する説明
S. Sarkar氏(ARPANSA) |
4日目は、セッション5として「原子力発電所および研究炉における放射線安全」と題するサブミーティングを行いました。日本から「原子力発電所における放射線防護システム」、またオーストラリアの規制を担当するARPANSAの規制官から「ANSTOの原子力施設の安全管理に関するARPANSAの評価」、さらにマレーシアから「マレーシアの医療放射性廃棄物の管理における安全性」と題するプレゼンテーションがあり、それぞれ質疑応答を行いました。
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J. Easey氏(ANSTO) |
その後、セッション6として「IAEA/ANSN、RCA/RAS9042等の他の国際協力プログラムとの調整」と題する円卓討議を行いました。円卓討議では、参加各国からそれぞれの経験や意見が紹介され、今後、他の国際協力プログラムとの調整を行いつつ有効な活動を展開していくことが確認されました。
ANSTOにおいて長年にわたり国際協力活動に携わってきたDr. John Easey氏がFNCAのこれまでの活動に関する賞賛と謝意を表明するとともに今後の活動への期待を述べられました。
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小佐古氏によるまとめの様子 |
最後のまとめでは、小佐古氏より「FNCA放射線安全・廃棄物管理プロジェクトの活動と将来について」説明があり、また今後の活動の展開について取り上げるべきトピックス案が示され、各国の希望や意見を集約しつつ効果的な活動を進めていくことが確認されました。ワークショップの最後に、当プロジェクトは各国に対して有益な知見と情報をもたらし、放射線安全と放射性廃棄物管理の理解、特に技術的側面に関する理解の促進に繋がり、アジア諸国における情報交換を促進することが期待されることについて合意しました。
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